「天然」と「美味しさ」

コーディネーターのHiroです。今日は、以前働いていた寿司屋の近くまで来ました。(地元です)

私は、半年に一回くらいしか寿司を食べに行きませんが、その理由は、恐らく、仕事をしていて、だいぶ見飽きてしまったから、というのが大きいかと思います。

試食もよくしていましたしね。

 

板前でしたので、カウンターで目の前のお客様に握るわけですが、時々「今日のお勧めは何だい?」と聞かれることがあります。

 

これは、意外と難しい質問です。

 

日によって仕入れるものが違うので、お勧めも日によって違うのですが、それが一概に全てのお客様の好みに合うわけではありません。

そのため、一方的なお勧めではあまり意味がなく、お客様の好みに合った食材を、より嗜好に合わせてお勧めする必要があるわけです。

 

ところで、

「今日は天然の○○が入っています」

と伝えると、「天然」に惹かれて注文される方が多かったのですが、これはいわば「天然」至上主義とでも言えるものです。

断言できますが、

 

「天然=美味しい」

 

という等式は必ずしも成り立ちません。全ての「天然」が正ではないのです。

 

天然の魚は、海の中で動き回っていて、野生を駆け回る動物のように脂肪が付きにくい傾向があります。こってりしたものの方が好き、トロが好き、という人にしてみれば、こういう魚は、必ずしも「美味しい」わけではないわけです。

例えば、大間の本マグロなどは国産マグロとして有名ですが、この天然マグロよりも、むしろ蓄養で育てられ、急速冷凍されて運ばれてきた豪州産のミナミマグロの方が、トロ部分がしっかり入っていることが多いです。

世の中には、この「天然」至上主義による大きな誤解があって、天然本マグロのトロの部分を提供すると「全然脂が乗っていないじゃないか!」と仰る方も多いのですが、そもそも天然なので、トロは少なめなんです。

 

しかし逆説的ではありますが、魚としての素材の美味しさを求めるならば、「天然」が良いのは言うまでもありません。

 

問題は、今の世の中の「美味しい」の基準が、どちらかというと脂多め・カロリー高めに振れている傾向にある点で、一度そのバイアスを外して、「美味しい」を見直してみる必要があるということです。

 

食材を美味しく食べる基本は、地産地消。近い場所でとれたものを、すぐに食べる、というのが一番美味しく、そして健康的だと言われています。

また、魚の場合、産地以上に何より大事なのは、水揚げされてからの時間、です。

 

当たり前ですが、釣り立てピチピチの魚が一番美味しいわけで、内陸に行けば行くほど輸送に時間がかかり、鮮度が落ちます。美味しい寿司というのは、近海で獲れた魚を、引き揚げてからできるだけその日のうちにさばき、ネタにされた寿司です。

 

海の近くに住む人にしてみれば全く理解できない問題かもしれませんが、内陸部に住む人にしてみれば、この「天然」の言葉はマジックワードなので、是非お気を付けください。

「天然」と言われたら、「いつ獲れたのか」も尋ねることをお勧めします。

 

 

ちなみに、私の地元は海なし県の群馬県。

豚や牛なら有名なんですけどね・・・もちろん、天然ではありえませんが。