「問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい」

 

この短歌、ご存知でしょうか。(社長のハリー)

 

川北天華さんという方が高校生の頃に詠んだ短歌です。何年か前にネット上でも話題になったので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

この歌に初めて触れたとき、その美しさに思わずため息をつきました。この歌の美しさ、おもしろさは、広がりのある自由なイメージが2重の定型​の上に詠まれているところにあるのだと思います。まずは、「五七五七七」という​音の定型。字余りもなく、短歌の定型に完全に準拠しています。次に​、数学の問題文の定型。私たちが高校の頃に繰り返し解いた数学の問​題は、まさにこのような形式でした。こうした重層的な「定​型」がこの歌の面白さを倍増させています。そしてその縛り・定型を越えて、我々に想起させる、新しく自由な美しさ。詠み手がいるのは、高校の教室なのでしょうか。それとも、自宅の勉強部屋なのでしょうか。数学の教科書に向き合いながら、ふと窓の外を見ると、夜空の青色が広がっている。街の明かりが照らす現実を忘れて、夜空に浮遊する思い。だれしも体験したそんなワンシーンを思い出させてくれて、何だか懐かしいような気もします。
それにしても気になるのは、「問十二」のほかに、この高校生はど​んな問いと向かい合ったのかということ。若い頃は、自分の外からも内から​も、いろんな問いかけがありましたよね。