妻が実家に帰って以来、2週間に1回のペースで義実家にお邪魔する生活をしています。

難しいのは、義母からの「寂しい?」という質問です。私はついつい考えてしまうのです。家に物理的に1人で居ることは、そんなに寂しいものだろうかと。

ある人は言います。家に帰ったときに、部屋が暗くない生活は良いものだと。しかし我が家の場合、普段家に居るのは私の方ですし、夕方に買い物に出て帰ってきても、妻が先に帰ってきていることは多くありませんでした。

また別の人は言います。話し相手がいることは良いものだと。しかし、今はSkypeやらLINEやら、気軽にコミュニケーションを取れるツールが山ほどあるのです。

強いて言うのなら、夕飯を作っても自分しか食べないというのは少々モチベーションが下がりますが、そこはまぁトトロにお供してもらえば我慢できる範囲でしょう。

 

もっとも、上に挙げたようなことはどれもこれも「妻がいつかは帰ってくるに違いない」という確信があればこその話。たとえばこれが離婚で出ていったのだとしたら。出産で妻の身に万が一のことが起こったりなどしたら。今ほど平静ではいられないに違いありません。そうなると、問題は物理的な空白・不在ではないわけです。

幼いころに親の仕事の都合で、地元に親友を残したまま遠くに引越したときのこと。新しい場所での生活では、さほど寂しさを感じなかったものでした。「数年したら東京に戻るよ」と言われていたからです。今がうまく行かなくたって、東京に戻れば待っている友達がいるという気持ち。それが私の心のセーフティネットとしての役割を果たしていたのでした。ところが数年後東京に戻ってきたらどうでしょう。私は大きくなった。彼も大きくなった。心の成長期を異なる環境で過ごした二人は、なんだかすっかりギクシャクしてしまいました。私が強く寂しさを感じたのは、その時でした。

 

つまるところ、今の私が妻の居ない環境に寂しさを感じることがないのは、他でもない、妻の存在があるからなのです。パートナーとして信頼を寄せているからなのです。

ただ、私はこの理屈を簡潔に表現する方法を知りません。だから、「寂しい?」という質問についつい口ごもります。そしていつも、申し訳なく思うのです。

それでは、今夜もこれから東京に向かいます。4月もよろしくお願いいたします。