こんにちは、社長のハリー?です。
知人の経営する会社で、広い会議室の壁一面に杉の足場板で本棚を据え付けたという話を聞き、素敵だなあと思っていたのですが、弊社にもテクプロ文庫なるものがあります。

知人の会社とは比べるべくもない小規模なものですが、翻訳のスキルアップや日本語のブラッシュアップ、専門知識の拡充に役立つ書籍や雑誌のほか、東洋経済等のビジネス誌、その他社員がこれはと思う小説やノンフィクションなども収めています。

今回そのテクプロ文庫に新たに仲間入りした書籍をご紹介。いずれも、弊社社員の友人知人の方々が訳したものです。

まずは一番左から。
宇宙英雄ローダン・シリーズの597冊目、『中央プラズマあやうし』。先日の翻訳祭でもご一緒した、ドイツ語翻訳者の井口富美子さんが訳された本です。このローダン・シリーズ、英語版Wikiを読むと、母国ドイツでは既に3,000巻以上発行されているとか、全世界でこれまでに20億冊売れたとか、恐ろしいことが書いてあります。これでも十分凄いのに、世界にはさらに息の長いシリーズもあるとか?
以下、井口さんの書かれた後書きから少し抜粋。言葉と文化の変遷というものを考えさせられます。

 

――鉄のカーテンが降りていた頃、「宇宙飛行士」を、東ドイツでは「コスモナート」、西ドイツでは「アストロナート」とちがう呼び方をしていて、私にはそれが分断の象徴のように響いたものだった。ところが、今は英語でも、国籍に関係なくロシアで訓練した者をコスモノート、アメリカで訓練した者をアストロノートと呼ぶのだという。アストロノートもコスモノートも同じ宇宙ステーションで共生する世界。時の流れと共に言葉も意味も移りゆくのだということを今さらながら実感した。

 

真ん中はヨナタン・ヤヴィン著『アンチ』イディッシュ語研究者の鴨志田聡子さんによる翻訳で、これはヘブライ語で書かれた物語だそうです。ヘブライ語の文芸書を日本語で読める機会などそうはなく(注1)、明治期以来(その前から?)、ありとあらゆる外国語の書物の翻訳が盛んに行われている日本の文化と歴史にも感謝だなあと。(注2)

 

一番右は日経ナショナルジオグラフィック社の『ビジュアルストーリー 世界の秘密都市』。文芸翻訳家の大島聡子さんによる翻訳です。地図に載らない世界の秘密都市が紹介されています。「修行者の街」「共産主義国の閉鎖都市」「冷戦下のシェルター都市」「美しい秘境の村」「厳寒の街に広がる地下回廊」・・・紹介文を読むだけでもわくわくしてきませんか!?

 

このテクプロ文庫、ちょっとずつ拡充していって、将来は図書室と呼べるくらいの規模にしたいなあ。お付き合いのある会社さん、翻訳者さんが自由に出入りして貸し借りできるようなコミュニティスペースにするとか。などと、夢が広がります?

 

注1.「ヘブライ語の文芸書を日本語で読める機会などそうはない」と書きましたが、この記事の原稿を鴨志田さんに見てもらったところ、「実はそうでもなくて、ヘブライ語の文芸作品はけっこう訳されてるんだよね」とのことでした。村岡崇光先生母袋夏生さん樋口範子さんなどの翻訳家がいるとのこと。話の中で、僕も新潮クレストブックスのエトガル・ケレット著『あの素晴らしき七年』というエッセイ集を読んだことを思い出しました。テルアビブを舞台にした、現代のイスラエルを生きる一家の物語です。シリアスな状況も垣間見えるのですが、筆致がユーモアに溢れていて凄く笑える作品でした。ちなみにこの『あの素晴らしき七年』の出版・翻訳には複雑な事情があるようで、ケレットはこの作品を母語のヘブライ語で書いたものの、ヘブライ語では出版せず、ケレットの友人の手で英訳されたものをまず出版したとのこと。このあたりのことは、鴨志田さんの論文「言語で分ける内と外 — イスラエル文学作家エトガル・ケレットの場合 —」に詳しいようです。

注2. ヨナタン・ヤヴィン著『アンチ』は岩波書店のスタンプ・ブックス・シリーズに入ったそうです。スタンプ・ブックスは英語からの翻訳ものが多く、ドイツ語からのものでさえ1冊のみとのこと。ロシア語やスペイン語、アジアや中東の言語からのものはまだ出ておらず、そこヘブライ語の作品を紹介できたことに意義を感じる、英語以外の作品ももっと翻訳されてほしい、とのことでした(鴨志田さん談)。