翻訳が必要な文書があるので、ネットで翻訳会社を探し、原稿を送付すると同時に見積もりを依頼した。無料の自動翻訳サイトに原稿をアップしてみた。そんなご経験はないでしょうか。実はいずれの行為も情報セキュリティの観点から危険かもしれません。場合によっては、重大な機密漏洩・個人情報漏洩に繋がるおそれもあります。

本記事では、なぜそうした行為が危険なのか、漏洩を防ぐためにどうすればよいかを具体的にご紹介します。

 

「とりあえず原稿送付」が危険な理由

端的に言えば、翻訳が必要な文書には機密情報や個人情報が含まれていることが多いからです。例を挙げると、

    • マーケティング資料:発売前の商品やサービスに関する情報
    • 社内資料:経営の根幹に関わる情報や発表前の業績に関わるデータ
    • 契約書や訴訟の文書:当事者の個人情報に関わる情報

などがあります。いずれも慎重な取り扱いが求められるものであり、過去に取引がない相手や信頼関係が築かれていない相手、契約を結んでいない相手に開示してしまうと、情報漏洩に繋がるおそれがあります。アイデアの盗用や、自社の利益の毀損に繋がるリスクもあります。

また、最近では自動翻訳サイトや、ChatGPTなどの生成AIも手軽に利用できるようになっているものの、機密情報や個人情報が含まれる原稿をアップするのは同じくNGです。ポリシーで情報の破棄が明示されていない限り、原稿の情報は吸い上げられ、学習に利用されます。他者が利用したときの出力結果に企業名や個人情報が現れるといったケースも実際に報告されています。

 

いずれもNG!

  • 過去に取引の無い翻訳会社や翻訳者にいきなり原稿を送る
  • (無料の)自動翻訳サイトにファイルをアップロードする・原文をコピペする
  • ChatGPTなど生成AIに原文をコピペする

 

NDA(秘密保持契約)締結のすすめ

それでは、情報漏洩のリスクを抑えるためにはどうすればよいでしょうか。その対策の一つが、翻訳会社や翻訳者に原稿を渡す前に秘密保持契約(NDA: Non Disclosure Agreement)を結ぶことです。当事者間で機密情報を安全に保管し、外部に漏らさないよう求める規定や、万が一事故が起きたときの対処方法や補償に関する規定などを書面にして残しておくことをおすすめします。

 

秘密保持契約に盛り込むべき内容

では、秘密保持契約にはどんな内容を盛り込めばよいでしょうか。ここでは、翻訳やその見積もりを依頼するときに取り交わす秘密保持契約書に最低限盛り込むべき内容をごく簡単にご紹介します。

 

1. 秘密情報の範囲

何を秘密情報とするかを定めます。たとえば翻訳原稿のほか、依頼にあたってやり取りしたメールの文面、参考資料として渡した情報なども秘密情報としておいた方が安全です。

2. 秘密保持義務

上記の秘密情報を安全に保持・管理し、漏洩させてはならないことなどを明確に規定しておきます。

3. 個人情報保護

翻訳業務を遂行するうえで知り得た個人情報を保護するための条項です。

4. 複写等の禁止

秘密情報や個人情報を複製または改変してはならないことを規定する条項です。業務完遂後の情報の破棄なども盛り込んでおくと安全です。

5. 知的財産権

秘密情報や個人情報に関連して知的財産に関わる成果が得られた場合にどうするかを定める条項です。

6. 事故が発生したときの報告

不正アクセスなどによる情報の漏洩や、情報の紛失などが発生した場合の対応方法や、損害が発生した場合の補償費用などを定めておきます。

7. 契約違反

秘密保持契約に違反した場合の対処や契約解除、補償費用などを定めておきます。

8. 有効期間

秘密保持契約の発効日と終了日を定めます。また、契約が終了した後も効力を有する条項があれば、併せて定めておきます。

9. 合意管轄

当事者間の話し合いで解決できない紛争が起き、裁判で解決しなければならない場合に、どこの裁判所で裁判を行うかを定めておく条項です。

 

ここに挙げたのは必要最小限の内容です。取引の規模や内容によっては、もっと詳細に定めておく必要があるため、弁護士や司法書士への依頼もご検討ください。

 

まとめ

本記事では、翻訳者や翻訳会社に仕事や見積もりを依頼するときにNDA(秘密保持契約)を結ぶ重要性についてご紹介しました。

弊社でも、お客様からご依頼を受ける際には、必ず秘密保持契約を結ぶと共に、お客様の秘密情報や個人情報の漏洩を防ぐ手段を複数講じています。

通常、秘密保持契約書はお客様の側からご提供いただくものですが、依頼が初めてで契約書のご用意がない、契約書を作成したご経験がないといったケースもあるため、弊社では、最低限の内容を盛り込んだテンプレートもご用意しております。それをお客様に精査していただき、修正したものを使って契約を結ぶことも可能です。また、弁護士によるリーガルチェックも承っております。機密性の高いドキュメントを翻訳する必要が生じた場合は、ぜひ当社にご用命ください。