この「翻訳者が見た世界の半導体技術」シリーズでは、弊社の半導体翻訳担当スタッフが読んだ世界各地の半導体技術に関するニュースや記事、論文を短く要約してお届けします。翻訳するうえで欠かせない専門知識の拡充や調べ物、最新トレンドのキャッチアップなどを目的に、主に海外の英語情報を収集したものですが、半導体ビジネスにかかわるあらゆる皆さまに役立つものになれば幸いです。

SciTechDailyさんに、「One Material, Four Behaviors: Superconductor, Metal, Semiconductor, and Insulator」(1つの材料で4つの振る舞い)という興味深い記事がありました。

今年4月の記事(紹介されている論文は24年10月のもの)ですが、読み解く過程でもろもろの論文にあたる必要があったので供養がてらご紹介します。

理化学研究所創発物性科学研究センター(CEMS)の研究チームが、二硫化モリブデンにカリウムイオンを注入し、イオン濃度+温度を調整したところ、「超伝導体、金属、半導体、絶縁体」の4電子状態に変化させられることを確認した、というお話です。

SciTechDailyさん曰く、今回のようなカリウムイオンの注入は、二次元材料の構造/物性の制御として役立つかも…とのこと。

また、チームの岩佐義宏博士曰く、「The variety of electronic properties based on a single material is highly intriguing to us from a materials science perspective=単一の材料でこれほど多様な電子物性が見られるのは、材料科学屋にとって非常に興味深いこと」だそうな。

以下、簡潔にまとめました。

  1. 二硫化モリブデンMoS2は2種の層構造状態(「2H」と「1T」)を持ち、2H相は半導体、1T相は金属として振る舞う特性がある
  2. 原子レベルの厚さのMoS2(2H相)にカリウムイオンを注入し濃度を高めたところ、1T相への転移を起こすことができた
  3. 1T相転移後のMoS2にさらにカリウムイオンを注入し、温度を5K(-268℃)程度まで下げたところ、超伝導体としての特性が認められた(2H相で超伝導体になることは過去に確認済み。)(こちらの調査では10K程度で2H相の超伝導を報告する論文が見つかったくらいですが…)
  4. 1T相転移後のMoS2でカリウムイオン濃度を下げ、80K(-193℃)まで温度を上げたところ、今度は絶縁体としての特性が認められた。

 


原子炉のコア付近に3日間連続で置いても壊れない半導体を発見

スタッフの嘉汕🐸です。BBCより、「What are semiconductors and why is Trump threatening 100% tariffs?」(半導体ってなあに?トランプ大統領が100%の関税をかけるのはどうして?)。

半導体の基礎の基礎と、昨今話題の関税についてざっくり触れた記事です。

以下、3行まとめ:

  1. 半導体は電気を通す性質と絶縁体としての性質を切り替えられる物質で、スマホからPC、ソーラーパネルなど、この物質に頼っている機器は多い
  2. 半導体製造は台湾のTSMCが中心で、次点でサムスン電子
  3. トランプ大統領の100%関税は、免除条件としてアメリカ国内での製造強化が設定されており、安全保障上やらなにやらの観点でアメリカ国内に半導体メーカーを呼び込みたい狙いがありそう

 



       

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