この「翻訳者が見た世界の半導体技術」シリーズでは、弊社の半導体翻訳担当スタッフが読んだ世界各地の半導体技術に関するニュースや記事、論文を短く要約してお届けします。翻訳するうえで欠かせない専門知識の拡充や調べ物、最新トレンドのキャッチアップなどを目的に、主に海外の英語情報を収集したものですが、半導体ビジネスにかかわるあらゆる皆さまに役立つものになれば幸いです。

 

IEEE(米国電気電子学会)が発行するIEEE Spectrumにて、2025年の半導体業界ニューストップ8がまとめられていました。

本文はわかりやすいものの端折られているので、興味をお持ちのトピックがありましたら、元記事にあたっていただくのがよさそうです。

以下、各ニュースのざっくりとした概要をまとめました(邦題は仮訳です)。タイトルをクリックすると、元記事にアクセスできます。

1. Diamond Blankets Will Keep Future Chips Cool(ダイヤモンドのブランケットでICチップもひんやり)

半導体チップの中にダイヤモンド膜を生成することに成功した、というお話。高速化に伴って発熱も増大しているICチップですが、優れた熱伝導率を誇るダイヤモンドの多結晶膜(厚さ数μm)を内部に生成した結果、温度を50℃も下げられたそうです。

2. The Tiny Star Explosions Powering Moore’s Law(小さな星の爆発が後押しするムーアの法則)

極端紫外線リソグラフィ(EUVL)の光源にまつわる現代技術の最も重要な(そして突飛もない)仕掛けについて解説した長編記事。 「1人の男とその祖父が織りなす心温まる物語……共演:超新星爆発、原子爆弾、高出力レーザー(カメオ出演:ジョン・フォン・ノイマン)」という紹介がなんだかとても理系です。

3. Latest 2D Chip: 6,000 Transistors, 3 Atoms Thick(2Dチップ最新事情:トランジスタは6,000個、厚さは原子3個分)

2025年4月に、中国の研究者が二硫化モリブデン約6,000個を集積してRISC-Vプロセッサの作成に成功した、というお話。研究所レベルの製造法にもかかわらず、良品率は99.7%もあったとのこと。

4. Nanoimprint Lithography Aims to Take on EUV(ナノインプリントリソグラフィでEUVに挑む)

キヤノンが世界初の「チップ製造用ナノインプリントリソグラフィシステム」を納入した、というお話。技術面・コスト面の課題が20年の歳月を経て解決され、コストやエネルギー消費量、精度の面でEUVLの競合候補となれる見込みはあるとのこと。ただ、「EUVLに十年の実績がある」ことを踏まえると、EUVLに競り勝つにはまだまだ乗り越える課題が多い模様です。 日本のお話なので、企業公式の説明があるのもありがたいところです(https://global.canon/ja/technology/nil-2023.html)。

 

追記:新年早々、キヤノンさんがこの技術を応用しウエハー平坦化技術を実用したとのこと(https://global.canon/ja/news/2026/20260113-2.html)。

5. Natcast to Lay Off Majority of Its Staff(Natcast、大部分のスタッフを解雇)

2022年8月に成立したCHIPSおよび科学法で設立された国家半導体技術センター(National Semiconductor Technology Center)ですが、その運営団体である「Natcast」が大幅に人員を縮小したというお話。

6. A Crucial Optical Technology Has Finally Arrived(重要光学技術、ついに登場)

長年の課題とされてきた「低消費電力の光インターコネクトとプロセッサの統合」について、BroadcomとNVIDIAがそれぞれ開発に成功した、というお話。光信号を扱う回路と電気信号を扱う回路を融合することから光電融合技術「Co-Packaged Optics(コパッケージド・オプティクス、CPO)」と名付けられ、まだ課題は多い模様。

7. Intel, Synopsys, TSMC All Unveil Record Memory DensitiesIntel、Synopsys、TSMCが揃ってSRAM密度の記録を更新

タイトルどおりIntel、Synopsys、TSMCの3社がそれぞれ革新的な製造技術によりSRAM(Static Random Access Memory≒記録のリフレッシュが不要なメモリ)のビット密度を更新した、というお話。TSMCとIntelはナノシート(ゲートオールアラウンド)という新構造のトランジスタを導入。一方のSynopsysは既存のトランジスタを使いつつ、セル構造の設計を工夫して密度を高めたとのこと。

8. The Long Strange Trip from Silica to Smartphone(スマホの半導体がたどった奇妙で長い旅路)

IEEEが分野を横断し技術界隈のあらゆる規模をまとめた特集「The Scale Issue」より。微細化が進み今や「2nmプロセス」のような表現も出ている半導体業界ですが、スマホに使われている半導体の原材料であるシリカ(二酸化ケイ素)は産出地から30,000km(およそ地球3/4周)にも及ぶ旅を経て製品に組み込まれている、というお話(半導体メーカーによってこの旅路の長さはもちろん異なります)。 スマホやPCに欠かせない半導体がどうやって手元まで届いたのかがわかりやすく(英語ですが)解説されているので、興味のある方はご一読を。



       

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