この「翻訳者が見た世界の半導体技術」シリーズでは、弊社の半導体翻訳担当スタッフが読んだ世界各地の半導体技術に関するニュースや記事、論文を短く要約してお届けします。翻訳するうえで欠かせない専門知識の拡充や調べ物、最新トレンドのキャッチアップなどを目的に、主に海外の英語情報を収集したものですが、半導体ビジネスにかかわるあらゆる皆さまに役立つものになれば幸いです。

最初の半導体として知られる「ゲルマニウム(Ge)」を超伝導体に

ニューヨーク大の研究により、最初の半導体として知られる「ゲルマニウム(Ge)」を超伝導体(電気抵抗が0となった状態)にできた、というニュースがありました。

 

▼ Scientists turn common semiconductor into a superconductor(おなじみの半導体が超伝導化)- ScienceDaily(2025/10/30付け)

 

 

 

以下、内容を簡単にまとめました。

 

    1. 集積回路などに使われている半導体を超伝導体にできれば、電流のエネルギー損失が(ほぼ)なくなるので、電子機器/量子機器の電力消費を大幅に減らしつつ性能を高められる
    2. ゲルマニウムを半導体として活用するには「ドーピング(別の元素を添加すること)」が必要だが、このドーピングでゲルマニウムの結晶構造が崩れると超伝導を実現できない
    3. ニューヨーク大の研究チームは「分子線エピタキシー法(MBE)」によりゲルマニウムにガリウム(Ga)を原子レベルの正確さでドーピングし、3.5K(約-269℃)で超伝導化に成功
    4. 研究ではウエハーサイズでゲルマニウムの超伝導体を作成できたので、実用化も期待される

 

とのこと。

「ドーピングすると構造が崩れるので超伝導化はむずかしい」という課題を「ものすごく正確にドーピングする」という正攻法で打ち破る姿勢はなんだか胸の熱くなるものがあります。

 

なお、この研究成果は後日他メディアにも取り上げられており、それぞれ研究説明の詳しさや評価がさまざまなので、ご興味がありましたらメディアごとの切り口を楽しんで見るのもよいかもしれません。

 

▼ New semiconductor could allow classical and quantum computing on the same chip, thanks to superconductivity breakthrough(超伝導化の技術革新で新たな半導体が誕生、同一チップ上で従来のコンピューティングと量子コンピューティングが両立可能になるか)(2025/11/27付け)

 

 

▼ Scientists Create New Type of Semiconductor that Holds Superconducting Promise(超伝導体として有望な新しい半導体が誕生)(2025/11/28付け)

 

 

▼ Could this common semiconductor become a game-changer for quantum chips? (おなじみの半導体が量子チップの未来を変える?)(2025/11/30付け)

 



       

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