本記事では、VR、AR、MRという概念の違いについて解説します。VRは少し知っているけど実際に体験したことはない、ARは聞いたことがあるけどMRは初耳、という方は、どうぞ最後までお付き合いください。特に、MRは筆者が最注目している技術です。

 

VRとは

VRは、Virtual Realityの略で、「仮想現実」と訳されます。

仮想空間を楽しむゲームやサービスは、かなり以前からさまざまな呼称で提供されてきたので、どんなものか思い浮かべやすいのではないでしょうか。1990年代にはUltima Onlineなどオンラインの仮想空間を舞台にしたMMORPGが登場していましたし、2000年代にはSecond Lifeがまさに現在のメタバースのような仮想世界でした。ごく最近で言えば、「マインクラフト」や「あつまれ どうぶつの森」も仮想世界に没頭できるゲームとしてよく名前が挙がります。

が、それまでの電脳空間やバーチャルワールドと現在のVRには、根本的と言ってよいほど大きな違いがあります。VRでは、モニターを見ながらマウスを動かすのではなく、ヘッドマウントディスプレイ/ヘッドセット/ゴーグルを頭に装着し、コントローラーやゴーグルの位置センサーを使用して、現実世界の身体と連動したアバターを仮想空間で動かします。この没入感・臨場感こそ、VRの醍醐味ではないでしょうか。

百聞は一見にしかず。こちらのMeta Questの公式YouTube動画をご覧いただくと、イメージをつかみやすいと思います。

 

 

代表的な活用例は、やはりゲームですが、BTSやきゃりーぱみゅぱみゅ、AKB48など、コンサートをVRコンテンツとして提供するアーティストも増えています。

VRと関連の深いメタバースについては、別の記事「メタバース」(近日公開)でご紹介しますので、ぜひご覧ください。

 

ARとは

ARは、Augmented Realityの略で、「拡張現実」と訳されます。

主に、現実の世界にコンピューターグラフィックス(CG)を重ね合わせて表示する技術を指します。つまり、カメラで映し出されている現実世界に、関連する情報をCGで表示するのです。

代表的なものは、スマホのカメラを使用し、画面に現実世界を表示して、その上にCGを重ねて表示するアプリやゲームです。最も有名な例は、現実の世界を舞台にしてポケモンでバトルする「ポケモンGO」と、撮影している顔の上に動物の鼻や耳を重ねて表示し、動きに連動させる「SNOW」でしょうか。

ゲームやエンタメアプリだけでなく、産業用やビジネス向けのツールやコンテンツもたくさん開発されています。そのような現場ではスマホよりタブレットがよく活用されているようですが、最近は透過型のゴーグル/スマートグラスも次々登場しています。頭部に装着したゴーグルの透明ディスプレイに、部品情報や作業指示、積荷情報や移動ルートが、文字、矢印などの記号、静止画像、アニメーションで表示され、ハンズフリーで作業できるのがメリットです。

こちらも、動画をご覧いただいたほうが早いかもしれません。

 

 

実用的な活用例としては他にも、スマホを教科書にかざすと、数学の図形や生物のDNA二重らせんが立体的に浮かび上がるアプリや、観光スポットで名所や史跡の上に情報や復元図を表示するアプリなどがあります。

 

MRとは

MRは、Mixed Realityの略で、「複合現実」と訳されます。

主にマイクロソフトが提唱している概念・技術で、その中心にあるのはホログラム/ホログラフィック技術です。SF映画によくある、空間に立体映像を投影するあれですね(ただし今はまだヘッドセットが必要ですが)。

ARとのいちばんの違いは、表示されているCGに近づいたり後ろに回り込んだりできる点です。実物大に投影した自動車の外装をはずして内部構造を角度を変えながら観察したり、部品を交換して数値の変化を計測したり、逆再生したりも可能です。あるいは、人間の身体のホログラムを投影し、超拡大して内部に入り込み、臓器の動きや血液の流れを観察したり、人体のCT画像(輪切りのアレです)を前後に動かしたり時系列を過去や未来に操作したりすることができます。

ホログラムは、ヘッドセットに付いているセンサーやマイクを通して、手指によるジェスチャ、音声、視線で操作できます。

論より証拠。Microsoftの公式YouTube動画をご覧ください。

 

 

使用するのは、Microsoft HoloLensというヘッドセットです。2023年1月にはAppleもMRヘッドセットを開発中であると報じられています。

 

それぞれの技術の得手・不得手

VR、AR、MRは、名称は似ていても、上記のように違いがあり、適した用途もそれぞれ異なります。

VRでは、別世界・異世界に入り込んで「そこで何をするか」にフォーカスが当たります。ゲームにせよトレーニングにせよ、仮想世界内のコンテンツが重要です。仮想世界の中でアバターが移動しても、ユーザーは現実世界のその場からは動きません。

一方、ARは、「何に投影するか」という、現実世界の対象が重要です。投影先はモノとは限りません。広い空間であるケースも多々あります。顔や教科書にCGを投影するだけでなく、観光アプリの例のように名所や史跡を対象とする使い方も多く、今後は敷地や街の中を動き回るという体験がコアになる活用例も増えていくでしょう。

MRは、コラボレーションが得意だと言えそうです。複数の人が同じホログラムを見て操作することが可能です。遠く離れた複数のグループが同じホログラムをリアルタイムで操作し、議論したり共同で作業したりすることもできます。

 

XRの進化

上記でご紹介した動画は、いずれも少し古いものであることにお気づきでしょうか。現在のXRはさらに進化しており、まだまだペースが緩まる気配はありません。

デバイスをとってみても、普及を加速させるためには、もっと軽量化し、もっと低価格化する必要があります。参入企業が続々と増え、その点への注力が高まる一方で、スマホをVRゴーグルに変身させるツール、XRコンタクトレンズ、VRとAR/MRをスムーズに切り替える仕組みなど、新奇なデバイスも多数登場しています。これらについては、本シリーズの記事「デバイス」(近日公開)で、詳しく取り上げます。

コンテンツ面でも新たなアイデアや試みが数多く出てきています。VR・AR・MRの組み合わせや融合も始まっていて、たとえばアミューズメントパークでは、VRで仮想空間の映像や活動を体験したあと、AR/MRに切り替えてフィールドに繰り出すといった楽しみ方も考えられます。実用系でも、VRでシミュレーションやトレーニングを重ねたあと、AR/MRで実地演習に臨むことが可能です。

個人的には、グーグルアースVRがリアルタイムのリモート映像と融合したら楽しいだろうなと妄想しています (VR酔いに注意!)。

コンテンツや活用事例の可能性は、まだまだドンドン広がりそうです。本シリーズの記事とTwitterツイートで、個々の事例を詳しく紹介しますので、ぜひお楽しみに!

(記事作成日:2023年2月7日)

       

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